2022年8月5日金曜日

Frei Aber Froh 自由に、喜ばしく

日中の気温が38℃に達した真夏日

大垣市の守屋多々志美術館のアウトリーチ事業で、同市内の興文中学校にうかがいました。


大垣市出身で歴史画の第一人者 守屋多々志

ウィーンに六段の調 (ブラームスと戸田伯爵極子夫人)』

という作品を残しています。

戸田極子(きわこ)伯爵夫人は、第11代大垣藩主 戸田氏共(うじたか)伯爵夫人で、岩倉具視の三女。

琴の名手だったそうで、夫が外交官としてウィーンに赴任していた折、

ブラームスの前で琴の演奏を披露としたという実話が残されています。

その回想場面を描いたのが、守屋多々志。

大垣とブラームスの意外な縁ですね。


このような本も出ているようです


ブラームスにフルートのための作品はないため、小品ではありましたが、

この機会を通じ必然的に彼の作品に取り組むことができて、嬉しかったです。


ブラームスについて調べていて、また作品を聴いていても、

「自由と孤独」というキーワードに行き着きました。

作曲家として世の中に認められてはいたものの、

定職を望むこともなく、結婚することもなく。

ブラームスは、何からも束縛されない自由な精神を貴んでいました。

それは同時に孤独感と表裏一体なものであっただろうと思います。

もっとも、”frei aber einsam" (=自由である、しかし孤独である)をモットーにしていたのは、親友であり当代きってのヴァイオリニスト ヨアヒムの方であり、ブラームスはこの親友のために F.A.E. (frei aber einsam)ソナタという作品を残しています。


ブラームスのモットーは ”frei aber froh" (自由に、しかし喜ばしく。)

なぜ "frei UND froh" と記さなかったのか、色々な見解があるようです。

”frei aber einsam” 自由だけど孤独でもあるよね、

aber froh それでも喜ばしく生きていこう、という

ヨアヒムのモットーを受けてのメッセージなのだろうと、私は固く信じるに至りました。

親友の肩を慰撫しているような、あるいは自分自身を鼓舞しているような、

そんな想いが何より作品から伝わってくるのです。



ブラームスは人づきあいが上手くなかったとされていますが、

うわべだけの言葉で表層的に大勢の人と付き合うのを好まなかっただけで、

本当に親しくなった相手にだけ見せる深い愛情があったのだろうと、察せられます。

私は若い時から彼の音楽が大好きだったのだけど、そういうわけか…と納得。


興文中学校文化部の皆さんや先生、美術館スタッフの方々にも熱心に聴いて頂けて

準備の時間も含め、佳い時間が過ごせました。