2015年12月14日月曜日

Fernweh ~遥かなるところへの憧れ

この時期、ドイツのことを懐かしく思い出す。

とりわけ、その冷たく冴えた冬の空気のことを。

夜の10時半に大学が閉まって、練習室の鍵を守衛に預ける。
校舎の重い扉を押し開けると、凍てつくような澄んだ外気が体を巡る。
それが1日を終えた安堵と共に心地良い。

オレンジ色の街灯や、
ベルリンの地下鉄の、あの鉄くさい独特のにおい。

…そしてクリスマスの近づくこの時期、
ドイツの街は、ますます音楽と切り離せない。

コンサートホールや劇場、街の教会では
クリスマスならではの演目が増える。

石造りの教会などは暖房が無いから、足下からシンシンと冷え込む。
ただ教会でのコンサートは、音響もその建物のしつらえも、
そこでしか醸し出せない雰囲気があって、それがまた良い。

Es war gestern schon der 3. Advent.

…当時は無自覚に接していた、カタチではないもの。
それはおそらく、生活そのもの。

『Fernweh (フェルンヴェ―)とは『Heimweh (ハイムヴェー)』ー英語で言う”homesick”ーの反対語である。
「遥かなるところへの憧れ」と訳すらしいが、「Weh」というくらいだから、遠くにあって手にし得ないという意味で、心の痛みを宿している。
あ、そうか。「感傷」と「憧れ」は表裏一体なんだ。


そんなことを考えていた折、偶然にも友人がくれたあるもの。


ベルリン・フィルのデジタルコンサートホールのクーポン券。

ベルリン・フィルは、定期公演をライブでネット配信しているが、ライブとなると時差の関係上、日本で視聴するのは難しい。大抵は朝方4時ころの公演になるから、ほとんど現実的ではない。

ただ、これまでの配信はアーカイブでも見られるようになっているから、友人が譲ってくれた券はそれに充てることが出来る。

折しも、指揮者のアーノンクールが86歳という年齢を理由に、引退表明した。
アーカイブではそのアーノンクールの近々の演奏も聴けるようであるから、
クリスマスの頃には、少しはベルリンに行った気になって、愉しもうと思う。

ありったけの五感の記憶をたどりながら。

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