2018年2月19日月曜日

藤村美穂子リサイタル / 2018@サラマンカホール

岐阜県(多治見市)のご出身で、
メゾソプラノ歌手、藤村美穂子さんのリサイタルに行きました。


久しぶりにドイツリート(=歌曲)の聴ける機会を、とても楽しみに出かけました。

実際、ゲーテやリュッケルトといったドイツ語による「詩」の世界が、
最短の道筋を通って次々と立ち上がり、
そのロマンに、その光に、その薫りに、その寒さに、その孤独に、
胸が震えました…。

ホールに入った時、まず驚いたのは、
「今日は座って歌います」という案内。


「ご体調がすぐれないのだろうか…?」
…という懸念は、しかし第一声から全くの杞憂でありました。

ドイツ語は子音が立つ言語でありますし、
実際学生の時は、「子音」の様々なニュアンスを、大仰に練習した記憶があるのですが、
藤村さんのドイツ語は、とてもやわらかにまとまって、
子音から母音にたどり着くまでの”距離”さえも、曲の表情によって様々なヴァリエーションがあることに気付かされました。

「言葉」と「歌」がかくも見事に一体化すると、表現は倍増されるのですね。

ワーグナー「天使」より

フルート吹きにとって特筆すべきなのは、
もちろん「呼吸」と「体のポジショニング」

椅子には思ったよりも深く腰掛け、骨盤を縦にキープ。
そのポジションが長時間可能なのは、体幹が上体を支え、引き上げているからでしょう。
肩や鎖骨は、呼吸の際にすらほとんど上下していません。
肩と胴は、太い十字架をきっているようにも見えました。
小顔なお写真からは察せられませんが、実際胴回りは「しっかり」されています。

これは、生徒さん方にもぜひ観て頂きたかったです!!
ライブでしか感じられないことが、いっぱいありますよね。

ピアニストのヴォルフラム・リーガー Wolfram Rieger 氏も、なんという「背景画家」かと思いました。
ドイツリートにおけるピアノパートは、単なる伴奏ではなく、詩の情景描写・心理描写がふんだんに盛り込まれています。

澄んだPPPが、無音の世界を導き、
時には天上への憧れを、時には生の終わりを描写する。
ロマンや退廃といった死生観すら感じさせるような…

これこそが、日常とは一線を隔する芸術の世界なのだ、と思える
素晴らしい体験でした。

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