ニコレを分かりやすく振り返るのに良い記事だと思いましたので、訳してみました。
記事の表題にもなっている「メッセージを伝達する人」
ニコレの存在は、レングリさんのこの言葉に集約されているように思います。
音楽に込められた大切なメッセージを伝えようとする姿。
時にはそれが厳しく響くときも、その一面はニコレの音楽に対する愛であり、人間に対する信頼だったのだと感じます。
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~SRF (スイスラジオ)の記事より~
Der Klang seiner Floete war warm und trug eine Botschaft
【温かな音色でメッセージを伝達した人】
オーレル・ニコレは9年間、ベルリンフィルのメンバーであり、一生をフルートに捧げた。ニコレは、前世紀における最も著名なスイス人音楽家の1人であり、カラヤンやフルトヴェングラーと言った指揮者の下で活躍した。享年90歳でこの世を去った。
「フルートはあらゆる楽器の中で、習得するのが最も易しく、早く上達する」と、ニコレは笑いながらそう語った。「ただ、good からvery good に至るまでの道のりは、非常に長い。」 彼はその道のりを進んできたのである。
【「ただ美しい」以上の何か】
チューリヒの音楽大学と、21歳の若さで栄誉ある「プルミエ・プリ(=最優秀賞)」の成績でパリの高等音楽院を修了した後、その1年後にはジュネーヴ国際コンクールで優勝。1950年にはフルトヴェングラーに請われ、首席奏者としてベルリンフィルに入団する。
9年間の在団中、チェリビダッケやカラヤンらと共演。ソリストとしてドイツ、ロシア、日本などでも成功を果たし、バロック音楽から現代音楽の分野に至るまで、心を砕いた。
70年以上もの間、ノイエンブルグ(訳注:スイスのある街)市民として、フルートに身を捧げてきた。大らかで自然な音楽性と、非凡なほど温かい音色、-それは常に「ただ美しい」ことを超えていたーと、かつての教え子の1人フェリックス・レングリ(訳注:フライブルグ音大教授)は語る。「ニコレの笛の音は、常にメッセージを伝達する使いだった。」
【しつこく、妥協の無い教師像】
オーレル・ニコレは、自身の楽器への愛を、情熱的に世に伝えた。すでに15歳の時、レッスンを開始。後に、ベルリンやフライブルグ音大で教鞭を取り、数々のマスタークラスを行った。しつこく、妥協が無く、厳しい教師だという評判は素早く広まったが、そのことによって(教師としての)成功も得た。教え子の1人エマニュエル・パユは、師と同じく非常に若くしてベルリンフィルの首席奏者の地位を得た。
【パユ談】
教師としてのニコレについて、パユはたくさんのことを語った。「音楽界におけるニコレの多様な貢献に加え、音楽以外の文化にも好奇心旺盛だった。例えば、ある時期ーまだ情報が遮断されていた頃ーニコレは東欧に関心を寄せていたし、イスラエルやパレスチナに対する興味もまた同様だった。またニコレは繊細で感受性の強い人柄で、彼の妥協の無さは、僕には魅力に感じた。僕から何かを引き出したい時、彼はあきらめるということがなかったのだから。」
※パユ インタビュー音声
http://www.srf.ch/play/radio/
【年老いてブツブツ嘆いているのとは無縁】
教師としてのオーレル・ニコレはまったく特別な存在だった。「先導する」というよりは、ある方向性を示すだけ。しかもレッスンではただ与えるだけでなく、彼自身が生徒から得る、という側面があった。ニコレ談「僕は各国の若者たちと接触するのが好きなんだ。それは年老いた者にとっては良い機会で、同世代とブツブツ文句を言い合っているだけとは違うからね。」
【終わりない呼吸】
このフルート奏者は、循環呼吸ーつまり演奏中にブレスを取らない奏法ーの開拓者の1人だった。「この循環呼吸で、九死に一生を得たことがあるんだ」と語る。「ある晩ウォッカをしこたま飲んだ後、警察にひっかかって、アルコール検知器にかけられたんだ。その時、循環呼吸でなんとか難を逃れたってことがあった。」
ニコレは、この技法をハインツ・ホリガーから学んだ。このスイスの作曲家であり、指揮者であり、オーボエ奏者である。ホリガーは、ニコレにこの技法を教えるだけでなく、彼のために曲を書いている。また、武満徹やジェルジ・リゲティ、アリベルト・ライマンらも同様、ニコレに曲を捧げている。
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ニコレの訃報 http://klangjapan467.blogspot.jp/2016/01/blog-post_14.html
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